SharePoint移行ツールの使い方【ファイルサーバーからの移行方法も解説】
ファイルサーバーやオンプレミス環境からSharePoint Onlineへの移行を検討しているものの、「何から始めればいいのかわからない」「移行ツールの使い方が難しそう」と感じている担当者の方は多いのではないでしょうか。
SharePointへの移行では専用ツールを利用でき、大量のデータを手作業で移す場合と比べて、転送作業の負担を軽減できます。
本記事では、Microsoft公式の移行ツール「SPMT」の使い方や、ファイルサーバーからSharePointへ移行する手順、移行前に確認すべき条件・制限、よくある失敗と対策について詳しく解説します。
SharePoint移行ツールとは?

SharePoint移行ツールとは、ファイルサーバーやオンプレミスのSharePoint Serverなどから、SharePoint OnlineやOneDriveへデータを移行するためのツールです。
対応する移行元と移行先は、使用するツールによって異なります。
Microsoftが無料で提供する「SharePoint Migration Tool(SPMT)」や、SharePoint管理センターから利用する「Migration Manager」が代表的な選択肢です。
より複雑な移行要件に対応するサードパーティ製の有料ツールもあります。
ここでは、SharePoint移行ツールが持つ主な機能や移行元・移行先の種類、手作業との違いについて解説します。
なお、SharePointの基本的な機能や使い方については、「SharePointとは?使い方や基本機能を初心者向けにわかりやすく解説!」という記事でも詳しく紹介しています。
SharePoint移行ツールでできること
主な機能には、ファイルやフォルダーの転送、移行進捗の確認、移行ログの出力などがあります。
アクセス権限やメタデータ、バージョン履歴を移行できる範囲は、移行元や使用するツール、設定によって異なります。
また、移行前に対象データをスキャンし、禁止文字を含むファイル名やパスの長さが制限を超えているものを事前に検出するプレスキャン機能も搭載されており、スムーズな移行計画を立てる上で役立ちます。
主な移行元と移行先
SPMTが対応する主な移行元は、Windowsファイルサーバーなどのファイル共有と、オンプレミスのSharePoint Serverです。
OneDriveは移行元ではなく、主な移行先の一つです。
移行先としては、SharePoint Onlineのチームサイトやコミュニケーションサイト、OneDriveが主な対象となります。
有料ツールの場合は、Box・Dropbox・Google Driveなどのクラウドストレージや、HCL Notes/Domino(旧Lotus Notes)などのグループウェアからの移行にも対応しているものがあります。
手作業によるデータ移行との違い
ファイルサーバーからSharePointへ手作業で移行する場合は、ブラウザからのアップロードやOneDrive同期クライアントなどを利用する方法があります。
しかし手作業では、大量のデータを扱う際に時間がかかるだけでなく、コピー漏れや誤った移行先への保存、アクセス権限の引き継ぎができないといった問題が発生しやすくなります。
一方、移行ツールを使えば大量データを自動・一括で転送でき、移行ログによって正常に完了したかどうかを確認することが可能です。
SharePoint移行ツールの4つの導入メリット

SharePoint移行ツールの導入は、単に移行作業を自動化するだけでなく、担当者の負担を大幅に軽減し、移行品質の向上にもつながります。
ここでは、SharePoint移行ツールを導入することで得られる代表的な4つのメリットを解説します。
1)移行作業の時間と負担を削減できる
手作業でのデータ移行は、ファイル数やデータ量が多いほど、担当者の作業負担が大きくなります。
移行ツールを使えばバックグラウンドで自動的にデータを転送できるため、担当者が別の業務を並行して進められます。
夜間や週末など業務時間外に移行を実行するスケジューリング機能を備えたツールもあり、業務への影響を最小限に抑えながら移行を進められます。
2)移行漏れや人為的なミスを減らせる
SharePoint移行ツールは、移行対象として指定したファイルやフォルダーを自動で転送するため、手作業に比べて移行漏れが発生しにくくなります。
また、移行が完了したファイルと失敗したファイルを一覧で記録する移行ログ機能を備えているため、移行後に問題のあった箇所を特定して対処できます。
3)大量のデータをまとめて移行できる
SharePoint移行ツールは、数百GB〜数TBに及ぶ大量のデータをまとめて移行することに対応しています。
特にMicrosoftのMigration Managerは、複数のエージェントを並行稼働させることで移行速度を高める機能を備えており、大量データの移行において高いパフォーマンスを発揮します。
4)段階的な移行で業務への影響を抑えられる
まず一部のフォルダーや部署のデータを先行して移行し、問題がないことを確認してから残りのデータを移行するという流れを取ることで、万が一トラブルが発生しても影響範囲を最小限に抑えられます。
また、差分移行(増分移行)により、前回の移行後に追加・更新されたファイルを差分として転送できます。
【比較表あり】主なSharePoint移行ツール3種類の比較

SharePointへの移行に利用できるツールは複数あり、それぞれ対応する移行元や機能、費用が異なります。
ここでは、Microsoft公式の無料移行ツール「SPMT」、SharePoint管理センターから複数の移行タスクを管理できる「Migration Manager」、サードパーティ製の有料移行ツールを比較します。
| 比較項目 | SPMT(Microsoft公式) | Migration Manager | 有料移行ツール |
| 費用 | 無料 | Microsoft 365の契約内容、移行元サービス、必要なストレージなどを確認 | 有料(製品により異なる) |
| 主な移行元 | ファイル共有、SharePoint Server | ファイル共有、Google Workspace、Boxなど | Notes/Dominoや複数環境など、製品によって異なる |
| 管理方法 | Windows端末にインストールして操作 | SharePoint管理センターから複数の移行タスクを管理 | 製品ごとの管理画面を使用 |
| 大規模移行 | 端末ごとに移行タスクを実行 | 複数のエージェントを使った並列処理に対応 | 製品によって異なる |
| 権限・メタデータ | 移行元や設定により対応範囲が異なる | 移行元や移行方式により対応範囲が異なる | 製品によって詳細な設定が可能 |
| サポート | Microsoftのドキュメントや契約中のサポートを利用 | Microsoftのドキュメントや契約中のサポートを利用 | ベンダーによるサポートを利用できる場合がある |
1)SPMT|Microsoft公式の無料移行ツール
Windowsファイルサーバー(共有フォルダー)やオンプレミスのSharePoint Server(2010・2013・2016・2019)からSharePoint OnlineおよびOneDriveへのデータ移行に対応しています。
直感的なGUI操作で移行元・移行先を設定でき、移行前のスキャンで問題のあるファイルを事前に検出する機能も備えています。
SPMTはMicrosoftが無料で提供しており、Windows端末にインストールして利用します。
大規模な移行では、データ量や端末性能、ネットワーク帯域を踏まえて移行計画を立てる必要があります。
2)Migration Manager|複数の移行作業を一元管理
Migration Managerは、SharePoint管理センターから複数の移行タスクを一元管理できるMicrosoft公式の移行ツールです。
複数のPCや仮想マシンにエージェントをインストールし、複数の移行タスクを並行して実行できます。
Migration Managerの利用条件や移行元サービス側の費用、移行先のストレージ容量などを確認したうえで、自社に適しているか判断してください。
3)有料移行ツール|複雑な移行や高度な管理に対応
有料ツールの中には、HCL Notes/Domino(旧Lotus Notes)や複数システムからの移行、権限・メタデータの変換などに対応する製品があります。
対応範囲は製品によって異なるため、移行要件と照らし合わせて確認が必要です。
代表的な製品としては、ShareGateやAvePointなどが挙げられます。製品名や対応機能は変更されることがあるため、導入前に各社の公式情報を確認してください。
SharePoint移行前に確認すべき8つの条件・制限

SharePointへの移行を始める前には、移行ツールの動作環境や対応できる移行元・移行先の確認だけでなく、ファイルの容量制限、禁止文字、アクセス権限の引き継ぎ範囲など、複数の条件・制限を事前に把握しておく必要があります。
ここでは、SharePoint移行前に確認すべき8つの条件・制限を紹介します。
なお、これらを自社の業務に合わせて設計するには、SharePointに関する専門知識が必要です。
自社での対応が難しい場合は、Microsoft 365やSharePointに詳しい専門家へ相談するのも一つの方法です。
私たち株式会社BITSCRATCHでは、SharePointを活用した社内ポータルサイトの企画・設計・制作・運用を支援しています。
移行後に社員が情報を探しやすいサイト構成になっているかどうかも含めて相談したい方は、無料資料ダウンロードページから資料をダウンロードしていただくか、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
1)対応している移行元と移行先
Microsoft公式のSPMTは、WindowsファイルサーバーとオンプレミスのSharePoint Server(2010〜2019)からの移行に対応しています。
Migration Managerは、ファイルサーバーに加えてBoxやGoogle Workspaceなどからの移行にも対応しています。
一方、HCL Notes/Domino(旧Lotus Notes)などの環境からはSPMTで直接移行できないため、サードパーティ製ツールなどを検討する必要があります。
移行先については、SharePoint OnlineのチームサイトやコミュニケーションサイトのほかOneDriveが一般的な対象となります。
2)必要なライセンスと管理者権限
組織全体や複数サイトを対象に移行する場合は、SharePoint管理者またはグローバル管理者の権限が必要です。
特定のサイトコレクションへの移行では、サイト管理者で対応できる場合があります。
また、移行先に対象のサイトコレクションやドキュメントライブラリが存在しない場合は、事前に作成しておく必要があります。
3)インストールする端末の動作環境
SPMTは、Windows 10以降またはWindows Server 2016以降で利用できます。
.NET Framework 4.6.2以上に加え、最小8GB、推奨16GBのメモリと、作業領域として十分な空き容量が必要です。
SPMTはインストールした端末上で動作するため、その端末から移行対象のネットワーク共有フォルダーへアクセスできることも確認してください。
4)ネットワークとファイアウォールの設定
社内のファイアウォールやプロキシサーバーの設定によっては、SPMTが使用するMicrosoftのエンドポイントへの通信がブロックされる場合があります。
必要なURLとポートはMicrosoft公式の一覧で確認してください。
また、移行中はネットワーク帯域が消費されるため、業務への影響を最小化するために夜間や週末など利用が少ない時間帯に移行を実施することも有効な対策です。
5)ファイル容量・件数・ストレージの上限
1ファイルあたりの最大サイズは250GBまでアップロードが可能で、これはブラウザ経由のアップロードにも適用されます。
ただし、リストアイテムへの添付ファイルは250MBが上限となっており、ドキュメントライブラリとリストアイテムで制限が異なります。
OneDrive同期クライアントで同期できるアイテム数や推奨される同期範囲は、クライアントの更新状況や環境によって異なります。
Microsoftは最大100万アイテムの同期対応を段階的に展開していますが、アイテム数が多い環境では同期性能や端末負荷を事前に検証してください。
なお、これはSharePointライブラリの保存上限やSPMTの移行件数上限を示すものではありません。
テナント全体のストレージ容量もライセンス数に基づいて決まるため、移行前に移行対象データの総容量を把握し、ストレージが不足していないかを確認しておくことが大切です。
6)ファイル名・禁止文字・パスの長さ
禁止されている文字には、「”」「*」「:」「<」「>」「?」「/」「\」「|」が含まれます。
また、組織の設定によっては「#」「%」も使用できない場合があります。
ファイルパスについては、SharePoint Onlineでは最大400文字という制限があります。
ファイルサーバーでは長いパスや禁止文字を含むファイル名を使用している場合があるため、移行前にSPMTのプレスキャン機能を活用して問題のあるファイルを洗い出し、事前にファイル名やフォルダー構造を見直しておくことが重要です。
7)移行できないファイルやデータ
ファイル名やパスがSharePointの制限に違反しているファイル、ツールが読み取る権限を持たないファイルなどは、移行時にエラーとなる場合があります。
一時ファイルなどの扱いは、SPMTとOneDrive同期クライアントで異なるため、使用する方法の制限を確認してください。
移行前にプレスキャンを実施して移行できないファイルの一覧を確認し、移行対象から除外するか事前に対処しておくことで、移行実行時のエラーを最小限に抑えられます。
8)権限・メタデータ・バージョン履歴の移行範囲
SPMTはフォルダーやファイルレベルのアクセス権限の一部を引き継げますが、設定によっては継承されない権限が生じる場合があります。
ファイルサーバー固有のメタデータやNTFS属性は、SharePoint側に列を作成するだけでは自動的に移行できるとは限りません。
必要な情報を引き継ぐ場合は、データの変換方法やマッピング方法、追加ツールの必要性を確認します。
バージョン履歴を移行できるのは、SharePoint Serverなど、移行元にバージョン履歴が存在する場合です。
通常のファイルサーバーにはSharePointのバージョン履歴がないため、この設定は対象になりません。
SharePoint移行ツール「SPMT」の使い方5ステップ

GUIベースの直感的な操作でファイルサーバーやSharePoint ServerからSharePoint Onlineへのデータ移行を実施できます。
ここでは、SPMTを使って移行を実施する5つのステップを順番に解説します。
1)SPMTをダウンロード・インストールする
インストーラーを実行すると自動的にSPMTと必要なコンポーネントがインストールされます。
インストールが完了したら、スタートメニューまたはデスクトップのショートカットからSPMTを起動してください。
SPMTは、Windows 10以降またはWindows Server 2016以降で利用できます。
.NET Framework 4.6.2以上など、Microsoftが定める動作要件も確認してください。
2)Microsoft 365のアカウントでサインインする
サインインには、移行範囲に応じた権限を持つアカウントが必要です。
組織全体の移行ではSharePoint管理者またはグローバル管理者、特定のサイトコレクションへの移行ではサイト管理者を使用できる場合があります。
多要素認証(MFA)が設定されている場合は、その認証ステップも完了させる必要があります。
3)移行元のファイルやフォルダーを選択する
サインイン後、移行元として「ファイル共有」または「SharePoint Server」を選択します。
ファイル共有を選択した場合は、移行するフォルダーのパス(UNCパスまたはローカルパス)を入力します。
SharePoint Serverを移行元にする場合は、移行元サーバーのURLを入力し、移行するサイトやリストを選択します。
移行元を指定した後、「スキャン」を実行することで移行前の問題(禁止文字を含むファイル名やパスの長さオーバーなど)を事前に確認できます。
4)移行先と移行オプションを設定する
移行元を設定したら、次に移行先のSharePoint OnlineサイトまたはOneDriveのURLとライブラリ名を指定します。
移行オプションでは、アクセス権限の扱いや、SharePoint Serverから移行する場合に保持するバージョン履歴などを設定します。
表示される項目は移行元によって異なります。
移行先に同名のファイルがある場合の処理は、移行元や使用する機能によって異なります。
事前にテスト移行を行い、既存ファイルがどのように扱われるか確認してください。
5)移行を実行してログを確認する
移行元、移行先、移行設定を確認したら、画面の案内に従って[開始]を選択し、移行を実行します。
SPMTのバージョンによって、画面構成やボタンの名称が異なる場合があります。
移行中は進捗状況がリアルタイムで表示され、移行済みのファイル数や処理速度を確認できます。
移行が完了したら、移行レポートを確認して正常に移行が完了したファイルと、エラーが発生したファイルの一覧をチェックしてください。
エラーが発生したファイルについては、その原因(禁止文字・パス長オーバー・アクセス権限不足など)を特定し、個別に対処した上で再移行します。
移行ログはCSV形式でエクスポートできるため、移行完了後の確認作業や報告資料の作成にも活用できます。
ファイルサーバーからSharePointへ移行する7ステップ

ファイルサーバーからSharePoint Onlineへの移行は、移行ツールを使えば技術的な転送作業自体は比較的スムーズに進められます。
以下では、ファイルサーバーからSharePoint Onlineへ移行する7つのステップを順番に解説します。
なお、ファイルサーバーからSharePointへ移行する際は、既存の構成をそのまま再現せず、社員が情報を探しやすく、管理者も運用しやすい構成へ見直すことが重要です。
自社での設計や構築が難しい場合は、SharePoint社内ポータルの構築経験がある専門家へ相談することをおすすめします。
私たち株式会社BITSCRATCHでは、企業ごとの課題や業務に合わせて、サイト構成・情報分類・アクセス権限・ナビゲーションを考慮したSharePoint社内ポータルサイトの構築を支援しています。
SharePointへの移行を機に社内ポータルの構成や運用を見直したい方は、無料資料ダウンロードページから資料をダウンロードしていただくか、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
なお、ファイルサーバーとSharePointの違いや移行を検討すべき理由については、「SharePoint(シェアポイント)はファイルサーバーの代わりになる?移行手順や活用のコツを解説!」という記事でも詳しく解説しています。
1)移行の目的と対象範囲を決める
ファイルサーバーからSharePointへの移行を始める前に、まず「何のために移行するのか」という目的と、「どのデータを移行するのか」という対象範囲を明確にすることが重要です。
対象範囲については、ファイルサーバー上に存在するすべてのデータを移行するのではなく、現在も業務で使用している有効なデータと、長期間アクセスされていない古いデータや不要なデータを整理した上で対象を決定します。
移行の目的と対象範囲をプロジェクト開始前に関係者間で合意しておくことで、移行作業全体をスムーズに進められます。
2)ファイルサーバー内のデータを調査・整理する
具体的には、移行対象データの総容量の確認、不要なファイルや重複ファイルの削除、ファイル名に禁止文字が含まれていないかの確認、フォルダーの深さやパス長が制限内に収まっているかのチェックを行います。
SPMTのプレスキャン機能を活用すると、移行に問題のあるファイルを自動で検出できるため、整理作業の効率化につながります。
3)SharePointのサイト・ライブラリ構成を設計する
重要なのは、ファイルサーバーのフォルダー構造をそのままSharePointに再現しないことです。
ファイルサーバーは階層フォルダーを中心に情報を整理しますが、SharePointではサイトやドキュメントライブラリ、列、ビューなどを組み合わせて情報を整理できます。
SharePoint Onlineで社内ポータルサイトを構築する際の具体的な手順については、「SharePoint Onlineでの社内ポータルサイトの作り方」という記事で画像付きで詳しく解説しています。
4)ユーザーとアクセス権限を設計する
SharePointのアクセス権限は、SharePointグループを使って管理するのが基本です。
ファイルサーバーで設定していたアクセス権限をそのまま引き継ぐのではなく、移行を機に権限の棚卸しを行い、実際の業務に必要な権限設定に整理することをおすすめします。
部門・プロジェクト・役職などの単位でグループを作成し、グループに対してサイトやライブラリへのアクセス権を付与することで、SharePointの権限管理がシンプルになり、運用がしやすくなります。
5)一部のデータでテスト移行を行う
SPMTの設定や移行先の構成が整ったら、いきなり全データを移行するのではなく、まず少量のデータでテスト移行を実施することをおすすめします。
テスト移行では、実際のデータを少量選んで移行し、ファイルが正しく移行されているか、フォルダー構造が意図した通りになっているか、アクセス権限が正しく設定されているかを確認します。
テスト移行でエラーが発生した場合は原因を特定して対処し、問題がないことを確認してから本番移行に進みます。
6)本番移行と差分移行を実施する
本番移行は、業務への影響を最小化するために夜間や週末など業務時間外に実施することが一般的です。
本番移行後も引き続きファイルサーバーで業務を継続している場合は、本番移行後に追加・更新されたファイルを差分移行する必要があります。
SPMTの差分移行機能を使えば、前回の移行以降に追加または変更されたファイルだけを効率的に転送できるため、最終的な切り替えのタイミングでデータの最新状態を移行先に反映できます。
7)移行結果を確認して運用を開始する
すべての移行が完了したら、移行ログを確認して正常に移行されたデータとエラーが発生したデータを精査します。
エラーが発生したファイルについては原因を調査し、対処した上で再移行を実施します。
移行の完了を確認したら、ファイルサーバーへのアクセスを停止し、社員にSharePointの利用開始をアナウンスします。
合わせて、社員向けのSharePoint利用ガイドや操作マニュアルを用意し、必要に応じてトレーニングを実施することで、移行後のSharePoint定着率を高められます。
SharePoint Onlineへの差分・増分移行は可能?引き継げるデータと確認方法

SharePoint Onlineへの移行では、最初に行う全件移行(フル移行)のほかに、その後に追加・更新されたデータだけを効率よく移行する「差分移行(増分移行)」の仕組みが利用できます。
ここでは、差分移行の仕組みと引き継げるデータの種類、移行ログの確認方法について解説します。
差分移行・増分移行の仕組み
差分移行(増分移行)とは、フル移行後に移行元で新たに追加・更新されたデータを移行する方法です。
SPMTでは、保存した移行タスクを再実行すると、前回の実行後に追加・更新された移行元のファイルを対象に増分移行が行われます。
本番切り替えの直前に増分移行を行うことで、フル移行後に追加・更新されたファイルを移行先へ反映できます。
移行元で削除されたファイルが、移行先から自動的に削除されるわけではありません。
追加・更新されたデータを移行する方法
SPMTで増分移行を行う場合は、保存済みの移行タスクを再実行します。
増分移行は複数回実施できるため、初回移行後に必要なタイミングで再実行し、切り替え直前に最終的な増分移行を行います。
差分移行は複数回実施することができるため、フル移行後も業務の継続に合わせて定期的に差分移行を実施し、切り替えのタイミングで最終的な差分移行を行うという進め方が一般的です。
引き継げるファイル・フォルダー・メタデータ
SPMTを使った差分移行では、ファイルのバイナリデータ(ファイルの中身)とフォルダー構造が基本的に引き継がれます。
通常のファイルサーバーに保存されている独自のメタデータは、移行先に列を作成するだけでは自動的に引き継げない場合があります。
必要に応じて、データの変換やマッピング、別ツールの利用を検討してください。
アクセス権・更新日時・バージョン履歴の扱い
SPMTでは、移行オプションの設定によってアクセス権限を移行するかどうかを選択できます。
ファイルの作成日時や更新日時の扱いは、移行元と使用するツールによって異なります。
テスト移行後に、日時情報が想定どおり引き継がれているか確認してください。
SharePoint Serverから移行する場合は、保持するバージョン履歴を設定できます。
ファイルサーバーからの移行では、SharePointのバージョン履歴は引き継げません。
移行ログとエラーを確認する方法
SPMTは移行完了後に詳細な移行ログをCSV形式で出力します。
移行ログには、正常に移行されたファイルの一覧と、エラーが発生したファイルの一覧が含まれており、エラーの原因(禁止文字・パス長・アクセス拒否など)も確認できます。
Migration Managerを使用している場合は、SharePoint管理センターのMigration Manager画面で、移行タスクの進捗やエラーを確認できます。
SharePoint移行でよくある7つの失敗

SharePointへの移行は、適切な準備と手順を踏めば成功しやすくなりますが、準備不足や設計ミスによって移行後にさまざまな問題が発生するケースも少なくありません。
ここでは、SharePoint移行でよくある7つの失敗と、その対策について解説します。
1)不要なデータもそのまま移行する
不要なデータをそのまま移行すると、SharePointのストレージ容量を無駄に消費し、移行後に必要なファイルを探しにくい環境になってしまいます。
移行前にはデータを棚卸しし、法令や社内規程、保存年限、データ所有者の判断に基づいて、不要なデータの削除やアーカイブを行います。
2)容量やファイル名の制限を見落とす
SharePoint Onlineには、ファイルサーバーと異なる制限が設けられており、これを見落としたまま移行を進めるとエラーが多発する原因となります。
特に注意が必要なのは、ファイル名に使用できない文字、デコード後のパス全体が最大400文字であること、1ファイルあたりの最大サイズが250GBであることなどです。
移行前にSPMTのプレスキャン機能を実行して制限に違反するファイルを洗い出し、ファイル名の変更やフォルダー構造の調整を事前に行うことで、移行エラーを大幅に減らせます。
3)ファイルサーバーの構成をそのまま再現する
ファイルサーバーは単純な階層フォルダー構造ですが、SharePointはサイト・ライブラリ・列(メタデータ)・ビューなどの機能を組み合わせてデータを整理することが前提の設計になっています。
ファイルサーバーの構成をそのまま再現すると、深い階層構造になってファイルを探しにくくなったり、SharePointの便利な機能を活かせない環境になったりしてしまいます。
移行を機にフォルダー構成を見直し、社員が「どこに何があるか」直感的にわかるサイト・ライブラリ構成を設計することが重要です。
4)既存のアクセス権限をそのまま引き継ぐ
ファイルサーバーでは長年の運用の中でフォルダーごとに個別の権限が積み重なり、誰がどこにアクセスできるかが把握しにくい状態になっているケースが多くあります。
SharePointへの移行を機に権限の棚卸しを行い、グループ単位でシンプルに管理できる権限設計に整理し直すことで、運用負担の軽減とセキュリティの向上が期待できます。
SharePointのグループ機能やMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)のグループを活用して、権限設定を体系的に管理する仕組みを移行前に設計しておきましょう。
5)テストせずに本番移行を始める
テスト移行を実施しないと、移行設定のミスや制限違反のファイルが多数あった場合に、本番移行の途中で大量のエラーが発生し、移行計画全体が遅延する原因になります。
テスト移行では少量のデータを使って実際の移行設定が正しく機能するかどうかを確認し、問題があればその場で対処できます。
テスト移行で見つかった問題を修正してから、本番移行へ進みます。
6)データ量と移行時間を過小評価する
移行速度はネットワーク帯域やサーバーの負荷、ファイル数・ファイルサイズの分布によって大きく異なるため、小規模なテスト移行で実際の転送速度を計測した上でスケジュールを組むことが重要です。
数百GBから数TBに及ぶ大規模な移行では、ネットワーク帯域、ファイル数、ファイルサイズ、移行元の性能、Microsoft 365側の処理状況などによって所要時間が大きく変わります。
少量のデータでテスト移行を行い、実測値をもとにスケジュールを組むことが重要です。
移行中に問題が発生した場合に備えて、切り替えを中止する判断基準、移行元を一定期間読み取り専用で保持する方法、バックアップや業務再開の手順を決めておきます。
7)移行後の確認・運用ルールを決めていない
移行後には移行ログの確認とエラーファイルへの対処、社員へのSharePoint利用開始のアナウンス、操作マニュアルの配布やトレーニングの実施が必要です。
また、SharePointでのファイル管理ルール(命名規則・フォルダー作成ルール・権限申請フローなど)を事前に定めて社員に周知しておくことで、移行後のSharePointが適切に運用される環境を整えられます。
移行後の定着までを計画に含め、利用状況に応じて運用ルールやサイト構成を見直してください。
SharePoint移行を専門会社に依頼すべき5つのケース

SharePoint移行ツールを使って自社で移行することも可能ですが、移行の規模や複雑さによっては、専門会社へ依頼することで作業負担や移行時のリスクを抑えやすくなります。
ここでは、専門会社への依頼を検討すべき5つのケースを解説します。
1)移行するデータ量が多い
移行対象のデータ量が数百GB〜数TBに及ぶような大規模な移行では、自社での対応に限界が生じることがあります。
大量データの移行では、移行スケジュールの策定、移行作業の監視と進捗管理、エラーへの迅速な対処など、移行期間中に継続的な管理が必要となります。
専門会社に依頼することで、豊富な経験を持つエンジニアが大規模移行の管理を担当し、トラブル発生時にも迅速に対応できます。
2)権限やメタデータの構成が複雑
ファイルサーバーの権限設定が複雑に積み重なっている場合や、移行先のSharePointで詳細なメタデータ設計が必要な場合は、専門的な知識が求められます。
権限の設計ミスはセキュリティリスクにつながるため、自社での対応が難しい場合は、SharePointの権限管理に詳しい専門家への相談を検討してください。
また、業務に必要なメタデータをSharePointの列として整理し、情報の分類や配置を設計するには、SharePointに関する知識が必要です。
3)Notesなど複数の環境から移行する
HCL Notes/Domino(旧Lotus Notes)や複数の異なる環境からSharePointへ統合する場合、SPMTでは直接移行できないデータや機能があります。
複数の環境からのデータを整理・統合してSharePointの適切な構造に移行するには、事前の調査・設計と移行後の検証まで含めた包括的なプロジェクト管理が必要です。
専門会社へ依頼する場合も、対応できる移行元やデータ、検証方法、移行後の支援範囲を事前に確認してください。
4)限られた期間で安全に移行したい
システムのリプレースや拠点移転などのタイミングに合わせて、短期間でSharePointへの移行を完了させる必要がある場合は、専門会社のサポートが有効です。
限られた期間でのプロジェクト遂行には、並行作業や夜間・週末の移行実施、エラー発生時の即時対応など、十分なリソースと経験が必要です。
専門会社に依頼すれば、移行計画の策定から実行・確認まで一気通貫で担当してもらえるため、社内の担当者が本来の業務に集中できる環境を維持しながら移行を進められます。
タイトなスケジュールでの移行が求められる場合は、早めに専門会社への相談を始めることをおすすめします。
5)社内ポータルの構成や運用も見直したい
ファイルサーバーからSharePointへの移行を機に、社内ポータルのサイト構成やナビゲーション、情報共有の仕組み自体を見直したいと考えている場合は、移行だけでなくポータルの設計・構築まで対応できる専門会社への相談が有効です。
SharePointの技術知識だけでなく、情報設計やUIデザイン、アクセス解析に基づく継続的な改善まで対応できる会社を選ぶことで、移行後の定着・活用までサポートしてもらえる体制を整えられます。
専門会社への外注を検討している場合は、「社内ポータルサイト構築を外注する流れは?費用相場から失敗しない選び方まで徹底解説!」という記事も参考にしてみてください。
SharePoint移行ツールに関するよくある質問
Q1. SharePoint移行ツール(SPMT)は無料で使えますか?
Microsoft公式のSPMTは無料で提供されており、Microsoft 365のライセンスがあれば追加費用なく利用を開始できます。
SPMTはWindowsアプリケーションとして配布されており、Microsoftの公式サイトからダウンロードしてインストールするだけで使用できます。
ただし、Migration Managerや有料ツールを利用する場合は、利用条件や移行元サービス側の費用を個別に確認してください。
Q2. HCL Notes/Domino(旧Lotus Notes)からSharePointへ直接移行できますか?
SPMTはファイルサーバーやSharePoint Serverからの移行を対象としており、HCL Notes/Domino環境からの直接移行には対応していません。
Notes/Domino環境からSharePointへ移行するには、対応するサードパーティ製の有料ツールを利用する必要があります。
ツールによって対応できるデータの種類や移行方法が異なるため、事前に移行対象のデータ形式や機能を整理したうえで、製品ごとの対応範囲を確認することが重要です。
Q3. SharePoint移行ツールで差分移行(増分移行)はできますか?
SPMTでは保存済みの移行タスクを再実行することで、前回の移行後に追加・更新されたファイルのみを移行する差分移行が行えます。
この仕組みを活用することで、フル移行後も移行元のファイルサーバーを引き続き利用しながら、最終的な切り替えのタイミングまで変更分を段階的に移行先へ反映できます。
ただし、移行元で削除されたファイルが移行先から自動的に削除されるわけではないため、最終切り替え時には移行先のデータ状態を確認することが必要です。
Q4. SharePointへの移行にはどのくらいの期間がかかりますか?
移行にかかる期間は、対象データの容量・ファイル数・ネットワーク帯域・移行ツールの構成によって大きく異なります。
数百GB〜数TB規模の移行では、フル移行だけで数日〜数週間かかることもあります。
計画段階では、まず小規模なテスト移行を実施して実際の転送速度を計測し、その結果をもとに全体のスケジュールを立てることをおすすめします。
Q5. ファイルサーバーのアクセス権限はそのままSharePointに引き継がれますか?
SPMTの設定によってフォルダーやファイルのアクセス権限を一部引き継ぐことはできますが、すべての権限が自動的に継承されるとは限りません。
ファイルサーバーでは長年の運用でフォルダーごとに個別の権限が積み重なっているケースが多く、そのまま移行すると権限設定が複雑になりすぎる場合があります。
移行を機に権限の棚卸しを行い、SharePointのグループ機能を活用して部門・プロジェクト単位でシンプルに整理し直すことをおすすめします。
Q6. ファイル名に使用できない文字はありますか?
SharePoint Onlineでは、「”」「*」「:」「<」「>」「?」「/」「\」「|」がファイル名・フォルダー名に使用できない禁止文字として定められています。
また、組織の設定によっては「#」「%」も制限される場合があります。
ファイルサーバーではこれらの文字を含むファイル名が使われているケースがあるため、移行前にSPMTのプレスキャン機能を実行して問題のあるファイルを事前に洗い出し、ファイル名を修正しておくことが重要です。
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SharePointへの移行は、ファイルを移すだけでなく、社員が情報を探しやすく、管理者も運用しやすい社内ポータルへ見直す機会になります。
私たち株式会社BITSCRATCHでは、SharePoint Onlineを活用した社内ポータルサイトの企画・設計・制作・運用支援を一気通貫で提供しています。
Microsoft 365に精通したエンジニアとSharePoint専門のデザイナー、デジタルマーケターが連携し、「使われない社内ポータル」を「社員が集まる社内メディア」へ変えることをミッションに支援しています。
SharePoint標準機能では難しいデザインのカスタマイズや、「おしらせ未既読機能」など独自機能の実装、アクセス解析に基づく継続的な運用改善まで対応しており、構築して終わりではない伴走型の支援が特徴です。
ファイルサーバーからSharePointへの移行に合わせて社内ポータルを見直したい、既存のSharePointサイトをリニューアルしたいという企業様は、無料資料ダウンロードページから資料をダウンロードしていただくか、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
まとめ
本記事では、SharePoint移行ツールの概要と使い方、ファイルサーバーからSharePoint Onlineへ移行する手順、移行前に確認すべき制限・条件、よくある失敗と対策について解説しました。
SharePointへの移行を成功させるためには、移行ツールの操作習得だけでなく、移行前のデータ整理・サイト構成設計・権限設計をしっかり行うことが重要です。
移行後にSharePointを活用してもらうには、社員が情報を探しやすいサイト構成と、継続して管理できる運用ルールを整える必要があります。